18 12. 2018 up date

アトリエを訪ねてvol.3|nesessiare〈2〉n?sessiareデザイナー 臼井真弓さん 金井朋子さん

刺繍とレースに魅せられて

限られた素材を生かしたデザイン

---一枚の刺繍のハンカチとの出会いが、その街の抱える問題点に繋がって、ものづくりの芯になっていったなんて、とても素敵な話ですね。でもデットストックの生地には限りがあるということですか?

臼井「はい、限りがあります。もう同じものを作る技術がないので、今あるものを使い切ってしまったら、おしまいです。だから無駄がないようにすごく大切に使っています。そこはパタンナーさんにも工夫していただいていて、一枚のレースの生地をどれだけ無駄にせずに洋服にするかっていうところからデザインがスタートします。リメイクの考え方に近いのかもしれません。

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もともと洋服にするために作られているレースではないので、長方形とか正方形のものが多いんです。それをうまく裁断してつないで、洋服に使えるように新しい生地と組み合わせたり、端っこのこの部分だけ袖口に使えるかな?パーツとしてどこかに活用できるかな?とかあれこれ考えてデザインします。手編みのフィレレースは、何週間もかけてテーブルクロスほどのサイズのものが作られるんです。そうやって大切に作られたものを、端っこすらも無駄にしたくないという想いがあります。小さいパーツや細長いレースをパッチワークして、布のように使うというのもこういう考えからスタートしています。」

手仕事の魅力

---形が先にあるのではなくて、材料から形を考えていくんですね。端っこすらも無駄にしないなんて...そう考えて洋服を見ると、愛おしさが増します。今回別注で作っていただいたレースのジレやバッグの作り方も、そういうデザインをしているからこそ作れたものだったんですね!そこまでいろいろと苦労をしてまで、手仕事で作られたレースや刺繍を使ったものづくりをしたいと思う、その魅力はなんですか?
臼井「私が初めて出会ったハンカチのように、一目見て誰もが『わあ!綺麗!』となる華やかさ、ドキドキする感覚は刺繍やレースが持つ一番の魅力だと思います。身につけた時にも目を引いて、褒められることも多い気がします。あとは、その華やかさの奥にある、積み重ねられた時間でしょうか。手仕事で作られたここにあるレースや刺繍は、どれも数時間で完成するものではありません。何日も、何週間も、何ヶ月もかけて作られたものたちです。それを作っていた人は、どんな日常を送っていたのだろう?どんな気持ちで毎日レースを編んでいたのだろう?と思いを巡らせることができるのが、手仕事で作られたレースや刺繍の魅力だと思います。同じデザインで何枚も生産することはありますが、全く同じでなくて少し個性があるのも面白いです。」

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金井「あとは、手仕事で作られたものは、ほつれても直して長く着ることができることも魅力だなと思います。私がとても大切にしているのが、このコットンチュールにハンド刺繍をしてあるブラウス。破れてしまっても大切に着ています。ものによってはほつれや破れを直してあるものがあってその直し方も可愛かったりするんです。自分たちの作ったものもそういう風に、長く着てもらえたらいいなと思っていて。昔の職人さんが作ったものを、サイズや形で今の時代に合うものにすることで、受け継がれていったら嬉しいし、作っている上での喜びだなと感じています。」

---確かに、レースや刺繍にしかない華やかさはありますよね!女性だったら、誰もがどきどきして憧れるような気持ちがあるような気がします。でもその一方で「私が着るのは無理」と、敬遠される方もいらっしゃったり、シンプルがいいという時代の流れもありますよね。
金井「そうですね。白は特に、”汚れる”とか”かわいすぎる”とかおっしゃられる方も多いです。でもそういう方にも、デザインでレースや刺繍の魅力を伝えていくというのが目標ではあります。手編みのレースはコットンでできているので、お洗濯もしやすいですし、着込んでいくと古着のようなまろやかな風合いになっていくのも魅力的です。今回作らせていただいた、ジレはブラウスだと甘すぎる、という方やポイントだけレースを取り入れたいという方におすすめのアイテムです。着物の襟元から覗かせて着る方もいらっしゃるんですよ。」

---着物と合わせるなんてとても洒落ていますね!そんな着こなし憧れます。ジレって、そんなに馴染みのアイテムではありませんが、いろいろな使い方ができそう。おすすめのコーディネートがあったら教えてください。
金井「もともとは、ヨーロッパの貴族が着ていたもの。学校の教科書とかにも出てきますが、近代のヨーロッパの人の服装で小さめのジャケットの中に合わせて着ていたみたいです。なので、今もジャケットやカーディガンなどVネックの襟元を華やかに見せるように使ったり、冬はアラン編みとかざっくりとしたニットの上にコーディネートするのがおすすめです。夏は、シンプルなワンピースやTシャツに合わせて、シーズン関係なく使えるので、n?sessiareでは毎シーズン人気のアイテムです。」
臼井「ワークパンツとかデニムとか、少しハードなアイテムと組み合わせるのが好きです。普段カジュアルな雰囲気の方にも、取り入れやすいと思います。」

理屈抜きの可愛さを目指して

--昨年から、長年の夢だったパリでの展示会をスタートさせたそうですが、海外での感触はどうですか?
臼井「レースや刺繍に対する反応は、どの国の人にも共通なんだなと感じます。『かわいい!』と笑顔になってくださる方が多いですね。もっと素敵なデザインを作りたいなと思っています。」
金井「世界中に、手仕事やレースが好きという人がいるのを実感できたのが嬉しいです。様々な場所で暮らす、レース好きの人たちのところに自分たちの作ったものが届くようにすることが目標です。」

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臼井「どのアイテムも、一つずつ手仕事なので作るのは時間も手間もかかります。どれだけ難しい技術なのかというテクニックの話をしだしたらきりがなし、価格も高くなってしまします。でもそういう薀蓄(ウンチク)や細かい理屈抜きで、かわいい!すてき!と心が躍るような魅力のあるものが揃うブランドでありたいなと思います。そして、いつか大切に着続けてもらった洋服に、どこか別の場所で再会することができたら嬉しいです。」



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一枚のハンカチとの出会いから始まった、手仕事を大切にするものづくり。
丁寧に作られたものには、時代を超えて人を動かす力が備わっていました。
自分たちの作りたいデザインを形にするだけじゃなく、
昔の人たちが時間をかけて作ったものを生かしたデザインをするという姿勢からは、
手仕事を生業としてきた人への尊敬と敬意が感じられました。

今だけじゃなく、過去と未来をつないでいくもの、
瞬間的に「かわいい」とワクワクする気持ちをくれると同時に
時を経ても色あせず、改めて価値に気づくことができる洋服なのかもしれません。

来週12/18からはn?sessiareの春のコレクションの中から、レースや刺繍を使ったアイテムの販売をスタートします。
軽やかなレースのアイテムは、冬の装いに華を添えてくれます。
ずっと大切にできるお気に入りの一枚を探しにいらしてください。

photo: RIKA OZAWA
text&interview:ASUKA TSUCHIYA

part3(春の新作のご紹介)へ続く|12/18(火)公開