魔法のふとん紀行
《 作品販売 》魔法のふとん紀行 7月「オレンジ色のメロンの思い出」

      アイテム説明

      ※ こちらは、画像にある作品のみのお届けとなります。物語は付属しておりません。

      7月のおはなし

      オレンジ色のメロンの思い出


      ここは地球の中でも最も色んな人が集まって住んでいる場所なんじゃないだろうか。私は大都会にいる。空に突き刺さりそうなくらい高いビルやキラキラ輝くネオン、古くて薄暗いお店が密集した地域もあれば、おとぎ話のような美しい住宅地、緑いっぱいの公園もある。大きな美術館や劇場が立ち並んでいたりもする。

      実は子供の頃、この場所に家族と旅行で来たことがある。その時は高いビルから夜景を見たり、映画の舞台にもなった、びっくりするくらい大きなおもちゃ屋さんに行ったりしたのだった。あとは街をぶらぶらただ歩いていたような気がする。うる覚えの思い出だけど、中でも鮮明に覚えているのは朝ごはんだ。

      私たちが泊まったホテルはその町の中心だった。夜もよくパトカーなのか救急車なのか、サイレンの音が響いているような場所だった。朝になると、ホテルの近くの小さな、これがダイナーって言うのだろうか、そこにふらりと入った。立派なホテルの朝食がついていたのに、父はたまにそういう小さな冒険をするのだった。

      父がいる時は父が主導権を握っていた。だから私たちは多分何も言わないで、父について行き、メニューなんて見ないで、出てくるものを待っていたのだと思う。運ばれて来たものは、全てが、どれもこれもびっくりするくらい大きかった。何枚も重なったパンケーキに、お皿いっぱいのカリカリベーコンとソーセージ、真っ二つに切っただけのオレンジ色のメロン、たっぷりの搾りたてのオレンジジュースとコーヒー。食べ物は一皿ずつだから、多分これが一人前のはず。それは私たちには食べきれるか不安になるほどの量で、4人家族で分けながら食べたのだった。何日滞在したか忘れたけれど、結局毎日そこに通って、同じものを食べた。すごく美味しかったのだ。私はそこで初めてオレンジ色のメロンを食べたと思う。そのあと別の街で緑色のメロンを食べけど、甘みもない味もない、ちょっとえぐみだけが残る硬い消しゴムみたいなものだった。偶然そういうものに当たっただけかもしれないが、それから率先してオレンジ色のメロンを食べるようになった。

      そんなことを、この間、緑色のメロンを食べている時に思い出したのだった。(このメロンは美味しかった。)家族で行ったあの朝食屋さんにもう一度行きたくなった。そして当時は全く興味がなかった、美術館にも行きたいとも思ってやって来た。ここには世界中から集められた名画がたくさんあって、中でも世界で一番大きい抽象画と言われている絵を見たかったのだ。

      朝早く、この大きな町の前と同じホテルに着いた。部屋に荷物を置き、まずは朝食屋を探した。以前は父にただついて行っただけなので、詳しい道の記憶がないけれど、お店の佇まいと、なんとなくの体に刻まれた方向感覚で歩いていく。(私は方向音痴ではないのだ。)ホテルから2、3分の場所だったと思う。おそらくこのあたりだろうという場所は、真新しい清潔感のあるカフェになっていた。普段だったら率先して入ってしまうような雰囲気のお店だったけれど、今日はがっかりした。やっぱり私は方向音痴なのかもしれないと、ホテルの周囲をぐるぐる歩いたが、結果は同じだった。

      諦めてホテルに戻ると、ベテランそうなコンシェルジュの男性に「おかえりなさいませ。」と声をかけられたので、朝食屋の話をした。「ああ、あのお店は良いお店でしたよね。私も仕事の後によく行きました。そうなのです。数年前に閉店してしまいました。せっかくいらしたのに、残念なことです。でも、もしよろしかったら、当ホテルに日当たりの良いテラスのレストランがございます。雰囲気は違ってしまいますが、オレンジ色のメロンもご用意がございますよ。」 結局提案されるまま、ホテルのレストランに行き、メロンを食べた。メロンは半分じゃなく、くし形だった。パンケーキも、ベーコンもソーセージも、オレンジジュースも食べたけれど、上品な量だった。一人にはぴったりだった。とても美味しかったし、満足だった。

      その後、美術館に世界一大きな抽象画を見に行った。作品の前にはベンチがあってそこに座った。すると、いつの間にか、私はその画の中に吸い込まれていて、手には真っ二つに切られたメロンを持っていた。ん??あまりにも非現実的すぎて、意味がわからなくなった。するとすぐに体が揺さぶられて、目が覚めた。監視員の人に「起きてください。」と言われる。ベンチに横たわって寝ていたようだ。あはは。みんなが見ている。歩き疲れと、満腹感があったとしても、美術館で寝るとはな。恥ずかしくて、とりあえずその展示室を出て、美術館のカフェで、今、コーヒーを飲んでいます。




      一年間の連載を終えて、作品をご覧いただける巡回展を開催いたします。
      巡回展終了後、こちらのサイトで販売を開始いたします。
      詳細はイベント特設ページをご覧ください。最新情報を随時更新いたします。





      9月のお話し「海・ピザ・ドレス」
      10月のお話し「さみしい時はチャイニーズ」
      11月のお話し「相棒誕生?」
      12月のお話し風邪引きのハッピーホリデーズ
      1月のお話「スシ・ガール」
      2月のお話「ピンク色の目 春の知らせ」
      3月のお話「マーガレットまんじゅう」
      4月のお話「小さな街の小さなベルベット」
      5月のお話「ライラック・タウン」
      5月のお話「バット、ベリー スペシャル フォー ミー」
      渡邉紘子さんのインタビューはこちらからお読みいただけます。


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