27 SEP. 2018 up date

hiroko watanabe interview vol.3

Magic Futon Journey魔法のふとん紀行

いつも遠くのどこかを想っている。
私がここで、眠ったり、ごはんを食べたり、仕事をしたり、笑ったり、泣いたりしている間も、遠くのどこかで、同じようなことをしている人がいたり、全く違うことをしている人がいる。

いや、人だけではなくて、蝶々が追いかけっこをしたり、動物が穴を掘ったり、木が風に揺れていたり、いろんなことが起きていることが、なんだか嬉しい。
ここが全てではない、と感じられることが嬉しいんだと思う。

ここじゃない場所を確認するため、旅に出ます。
魔法の絨毯があったらいいけど持っていないから、魔法のふとんで。
魔法のふとんは空を飛べないけれど、ふとんで眠っている時、最も自由に旅をしているように思っています。

軽やかな旅のはじまりはじまり。

リアリストの作るファンタジー

--渡邊さんの作る世界は、ファンタジーの要素が強いと思いますが、ご自身はファンタジーの世界は好きですか?

「うーん。自分は結構リアリストなんですよね。
作品がふわっとしているので、そういうイメージの人を想像される方も多いみたいで…。在廊しているとイメージと違いすぎで、スタッフと間違えられることもよくありました(笑)
生活もすごく現実的で、作家活動意外にも、毎日忙しく働いていて余裕がない時も多くて…。でも、だからこそ、そういう世界が作れるのかも、っていうのはあります。現実世界から逃げているというか。全然違う世界を作るのが、癒しというか」

--なるほど。

「とは言っても、楽に作品を作っている訳ではなくて、毎回悩みながらの辛い作業でもあります。結構パンクな気持ちで作っているんですよ。
だから展示を見て、『癒しだね』と言われると腑に落ちなかった時期もあったんです。でも自分も展示を見に行くことがすごく好きで、その空間に入った途端に別世界に行けて、気分が変わるんですよね。
現実がとても大変でも、その一瞬は違う世界に連れて行ってもらえて、幸福感を味わえる。そういう意味でみんなが『癒し』と言ってくれたのだったら、すごく嬉しい!すごい褒め言葉をいただいているな、と今は思うんです。
だから自分もそういう世界を作りたい、見たこともないものを見たいし見せたい、って思っています。〇〇風、とかじゃなくて。
誰でもできるけど、誰にも作れない、そんなものを作りたい。
長くなりましたが、そう考えると…ファンタジーが好きなんだと思います。」

裸で泳いだフィンランドの湖

--今回は空間ではなく、毎月第4金曜日に一つずつ作品を発表していただく
「連載」という形での作品づくりになりますが、いかがですか?


「今まで展示中心の制作だったので、今回の連載に向けて、久しぶりに一つの作品をじっくりと作りました。
テーマの『魔法の布団紀行』というのを考えている時に、
留学先のフィンランドの湖で裸で泳いだことを思い出したんです。
フィンランドではサウナに入る文化があって、サウナに入って暑くなったら、湖で冷ますんです。その日は友人の家でサウナに入って、そのまま湖で泳ぎました。日本人だから、裸で泳ぐってすごく違和感だったんですけど、夜で、見上げたら月があって、周りは森で。すごく気持ちよくて。
こういう世界ってあるんだな~って。
私が日本でバタバタしていても、全く別の場所で、
裸で湖を泳いでる人がいるって思うと、なんか頑張れるっていうか。
このお話が、そういうものになったらいいなと思っています」

--どんな旅になりそうでしょうか?

「場所はもちろん、いろんな体験をお話しにできたらと考えています。
自分が本当に体験したことも混じるかも。
旅行記だけど、自分の日常に繋がっていくような話しにできたらいいなって思います。
初めてのことなどでドキドキですが、よろしくお願いします」

--はい、こちらこそ、毎月届くお話を楽しみにしています!ありがとうございました。

  さあ、それではいよいよ明日、『魔法のふとん紀行』第1話がはじまります。



《staff》

photo (exhibition): YAMAMOTO AYANO

photo(others):KYOKO KABASHIMA(AMBIDEX)

text:ASUKA TSUCHIYA

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